業績予想

業界レポート;KOA;短期・中長期ともに材料豊富でアップサイド

namiten

KOA(プライム、コード6999)

修正後もなお相当の保守性 来期営業益は大幅増益へ

;KOAは7月23日大引けに上方修正を開示したところ、受注実勢と対比すれば、修正後計画でもなお相当の保守性が残るとみる。今般の当サイト予想の更新にあたっては、売上高が会社計画から幾分上振れているほか、固定費増(18億円)を2億円程度低く見積もっている。よって、一段の受注増や生産増を織り込んだ水準ではない。さらなる業績の上振れも視野に入ろう;

加えて、大手証券で唯一同社をカバーするモルガン・スタンレーMUFG証券は、7月24日付のリポートでなお会社計画修正前の業績予想を据え置いている。昨年は決算発表からおよそ3週間後に予想を更新した経緯があり、来週にも業績予想および目標株価の改定が見込まれるところだ。同証券の予想は会社計画を大幅に下回る水準にあって、少なくとも会社並みへの引き上げがなされると考えられるから、目標株価の引き上げ余地は大きいとみる。短期的な株価のアップサイド材料として意識しておきたい。

決算期	  27/3		  28/3
売上高 900億円↑ 1000億円→
営業利益 65億円↑ 85億円→
最終利益 85億円↑ 60億円→
EPS 229円↑ 161円→
配 当 63円 63円
──────────────────
12ヶ月先予想EPS 204.72円
    ┗同PER 11.87倍
(来年8月8日までの12ヶ月間)
(株価は8月7日の終値)

<表の見方>
(前回予想と比べて)↑・↓…上振れ/下振れ →…おおむね横ばい

当サイトの注目点

  • Q1受注高246億円、BBレシオ1.18は2021年度Q3以来の高水準。対して修正後計画はQ2以降3四半期連続で売上高横ばいの計画としており、受注実勢との乖離は大きい
  • 横ばい計画の主因は北米ディストリビューター向け先行発注の剥落。会社は下期を通じて影響が残るとみている
  • 材料費前提は年初来高値圏の原価実績を反映しているとみられ、足元の貴金属市況の調整は未反映。下期からの価格転嫁と併せ、利益には上振れ余地があるだろう
  • 唯一のカバレッジであるモルガン・スタンレーMUFG証券の予想改定が来週にも見込まれる。目標株価は3300〜4200円程度への切り上げ余地があり、投資判断の見直しもありうる

受注実勢と売上計画の乖離は大きい

Q1の受注高は246億円(前四半期比36億円増)、BBレシオは1.18と、高水準であった前期4Qの1.09からさらに上昇した。受注残高は174億円、Q1の月平均売上高の2.5カ月分に相当する。

しかし修正後の通期計画(Sales;873億円)を分解してみると、Q2計画は約221億円、下期計画(Sales;443億円)を単純に折半したQ3〜Q4も約221億円となり、3四半期にわたって横ばいを見込んでいる格好だ。受注が積み上がる局面で売上を横ばいに置く計画は、それ自体が保守性の表明といえよう。

会社によれば足元の受注には一部に一過性のもの(北米向けの値上げ前の先行発注)が含まれているという。この先行発注の影響がQ2だけでなく下期を通じて残る前提で計画を立てており、その結果として売上高見込みが横ばいの予想になっているとのことだ。

ここに保守性の所在が明確に現れていよう。北米はQ1の売上構成比にして16%、金額で33.5億円にとどまる。仮に先行発注の剥落が四半期あたり10億円規模だとしても、全社売上に対する影響は5%程度である。一方でアジアは前年同期比31.5%増、日本は同18.5%増と、いずれも二桁の増勢が続く。北米の反動を全社の横ばいで吸収する計画は、他地域の増勢をほぼゼロと置くに等しい。

用途別でも産機が前年同期比38.1%増、通信が同77.0%増、電源が同57.9%増と、AI関連を軸とした需要拡大は明確である。自動車(構成比46%)が前四半期比2.5%減と一服しているものの、これら成長用途の伸びを打ち消すには至っていない。

当サイトは通期売上高を900億円と、会社計画を27億円上回る水準に置く。四半期あたり9億円程度の上振れであり、BBレシオ1.18が示す受注超過を踏まえれば過大な想定ではないと考える。

高値圏の材料費を前提としており上振れ余地がある

会社側によれば、原材料価格上昇の影響額は営業利益ベースで前期比ー31億円である。会社は業績予想の修正発表を行う場合、なるべく直近の原価実績に基づいた収益の再計算を行うケースが多いと回答しており、相場連動性の高い材料か否かを問わず、直前のコスト状況が反映されているとの説明があった。

当サイトは、当社の原価実績は市況に対して基本的に1四半期程度遅行するとみている。Q1の材料費増は本年1〜3月頃の銀・ルテニウム価格上昇を反映したものであり、7月23日時点の計画に織り込まれた原価水準は、高値圏の調達が原価に流入した後のものと解される。足元7月の貴金属市況は年初来高値から相当の調整が入っているが、この調整が原価に反映されるのは下期以降となろう。

すなわち、材料費前提には下振れ余地──利益にとっては上振れ余地──が残る。加えて材料費上昇分の価格転嫁は下期からの実施が計画されており、コスト低下と価格是正が同時に発現する局面が到来する可能性がある。

同業大手の決算からもDC関連需要の強さが確認される

TDK(6762)、京セラ(6971)、村田製(6981)のQ1実績は、いずれも当四半期として過去最高の売上高を更新した。京セラと村田製は通期会社計画を上方修正しており、村田製の受注高も四半期ベースで過去最高を更新している。人工知能(AI)サーバー等、データセンター(DC)関連需要の拡大が業界全体の潮流であることは、他社決算からも裏付けられよう。

KOAのアジアAI関連機器向け、日本産機向けの伸びはこの潮流と整合的であり、同社計画がこれを十分に織り込んでいないのであれば、なお保守的と評価できる。

もっとも、村田製作所が受注の一部について供給逼迫を警戒した前倒し需要の可能性に言及している点は、KOAの受注の質を考えるうえでも参考になろう。

固定費増18億円には2億円程度の余裕があろう

期初計画対比で固定費影響(前期比)が11億円→29億円へと拡大した点は、修正計画において最大のマイナス要因である。会社側は主に販売費と労務費、ならびにマレーシア新工場の稼働開始によるものと説明している。

ただし、この差(18億円)のうち販売費に相当する部分は、売上増加に連動する変動的な性格を持っていると当サイトは考えている。売上高を99億円上方修正した以上、これに伴う販売費増は自然だが、売上を保守的に置いたうえで販売費を厚めに見積もっているのであれば、二重に保守的な見積もりということになる。

当サイトは固定費増を16億円程度と、会社計画対比2億円低く見積もる。結果として通期営業利益は65億円、会社計画53億円を11億円強上回る水準としている。

来期は材料費影響の剥落で大幅増益へ

当サイトは材料費増影響のー31億円は、価格転嫁が通期で寄与する来期には剥落すると考えている。会社の中期経営計画は営業利益目標74億円であるが、当サイトは85億と今期比20億円の大幅増益を見込む。

売上高予想は1000億円、今期予想比11%増であり、マレーシア新工場の稼働とQ2以降に実施される生産能力拡大投資が寄与する前提である。

純利益が60億円へ減少するのは、今期に工場移転補償金および法人税等調整額(子会社解散に伴う△7.5億円)といった一過性要因が含まれるためであり、実力ベースの収益力は改善が続くとみる。

配当、実質的な性向には留意したい

配当は今期・来期とも63円を予想する。同社は1株当たり年間配当金の下限を30円、連結配当性向30%前後を目安としており、会社の純利益計画に対して配当性向は30.2%に相当する。

ただし今期には前述の一過性要因が相応に含まれており、これを除いた実力ベースの利益に対する実質的な配当性向は30%を相応に上回る計算となる。来期に一過性要因が剥落した場合、性向30%の機械的な適用では減配となる。

もっとも、会社は、機械的に計算するのではなく今後の市場予測を考慮しながら、できるだけ配当方針に沿った配当を行っていきたいとしている。実際の減配リスクは限定的とみて、63円を据え置く。

海外証券の予想改定が短期的な株価材料に

同社をカバーする大手証券はモルガン・スタンレーMUFG証券のみである。同証券は7月24日付で決算後の取材内容をまとめたリポートを発行しているが、この時点では業績予想および目標株価は改定されていない。前期は決算発表からおよそ3週間後に業績予想を更新しており、これに倣えば来週にも更新が入る公算が大きい。

同証券の今期予想は修正後の会社計画を大きく下振れており、会社並みの水準へ引き上げは確実とみる。会社計画EPSは208円程度と、同証券予想を5割超上回っている。同証券の目標株価(3000円)は現行EPSに対しPER22.3倍相当とされるが、改定後EPSに対しては14倍台まで低下することになる。

もっとも、目標株価はDCF法により算出されており、単年度の増益がそのまま比例的に発現するわけではない。同証券は5年間の明示的予想期間の先にターミナルバリューを置く前提であり、逆算するとターミナルバリューが理論価値の大宗を占める。したがって目標株価の変動要因は今期計画ではない。予想期間全体、ひいては継続価値の前提を担当アナリストがどれだけ押し上げるかが焦点だ。

当サイトの試算では、割引率を据え置いた場合、継続期間の1株当たりFCF前提が10円動くごとに目標株価は150円強変動するとみる。すなわち、レンジとしては3300〜4200円程度、中心値は3700円近辺とみておきたい。直近終値2430円(8月7日)に対する上値余地は3割から7割に及ぶ。

とくに投資判断の変更が同時に行われるか、に注目だ。現行の目標株価(3000円)でも直近株価に対して2割の上値余地があるなかで、投資判断は3段階で真ん中のイコールウェイトに置かれている。目標株価が3500円を超える水準へと切り上がれば、投資判断との整合性は取りにくくなるだろう。予想改定に投資判断の変更を伴う場合、株価インパクトは目標株価の切り上げより大きくなる可能性がある。なお、6月中旬に同証券はアンダーウェイトからの格上げを実行している。

下振れ方向の論点として、同証券の次四半期以降の為替前提は会社想定(1ドル=159円)を下回る1ドル=155円に置かれている。改定に際してこの前提が据え置かれる、あるいは7月31日の協調介入を受けてさらに切り下げられる場合には、上記の利益上振れは一定程度相殺される。また割引率の前提はかなり低位にあり、長期金利の上昇局面では目標株価の押し下げ要因となる点にも留意したい。

リスク要因

  • 受注の実需性。 受注残高が月商2.5カ月分まで積み上がる局面では、一般に納期長期化を見越した前倒し発注が受注高に含まれやすい。同社は2021年度に受注残高が251億円まで積み上がった後、2022年度に調整局面を迎えた。会社は現在の受注についておおむね実需との認識を示す一方、価格是正前の駆け込み発注が多少ある可能性も否定していない
  • 為替。 今期の会社前提は1ドル=159円である。Q1営業利益は前年同期比3.5億円の増益だが、為替影響を除く実質ベースでは2.2億円の減益であった点は軽視できない。7月31日には日米両政府が協調で為替介入を実施したことが伝わっており、円高が進行した場合、実質ベースの収益力の弱さが表面化する展開はあり得よう
  • 貴金属市況の再騰。 銀・ルテニウム価格が再び上昇に転じる場合、上記の下期以降の上振れシナリオは前提が失われる
  • 自動車向けの一服が長期化する展開。 構成比46%を占めるだけに、中国・欧州の需要動向が長引く形で軟化した場合の全社への影響は小さくない

お断り

本レポートおよび関連情報は、令和8年8月8日時点の市況環境に基づいています。市況環境は刻一刻と変化しており、ここに表示する情報が最新のものであるとは限りません。本レポートは、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。なお、本資料および関連情報の活用によって生じたいかなる損害(直接的、間接的、付随的、結果的損害を含む)についても、情報提供者は一切の責任を負いません。これには、投資損失、機会損失、その他の金銭的損失も含まれます。

■ 投資判断について
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