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【日経無双】契約者数100万人超で一人勝ち 他紙、なお遠い「ネットメイン」

namiten

【東京総合 = 社会】全国紙の電子版契約者数で日経一人勝ちの構図が強まっている。12月には有料会員数で100万人の大台に乗せ、非英語メディアで世界一位を確立した。各紙に先駆けて模索する、新時代の生き残りをかけた戦いはまだまだ続く。

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他紙圧倒の日経新聞、価格は割高

日経電子版100万人突破は、「安ければいい」という安易な考え方がネットの世界では通じないことを改めて映す。

日経電子版の価格は月4200円からで、他紙の朝日(980円)、毎日(980円)、産経(1280円)と比べると明らかに割高と言える。しかし、月額900円台から身を削って電子版の提供を行う他紙は苦戦している。

各紙の概要とYahoo!ニュース(参考値)
五大紙 購読料 契約者数/月間PV
日経電子版月4,200円〜107万人/5.6億PV
読売新聞オンライン実質月3,400円〜–万人/1.8億PV
朝日新聞デジタル月980円〜25万人/1.8億PV
毎日新聞デジタル月980円〜非公開/1億PV
産経ニュース月990円〜非公開/0.6億PV
Yahoo!ニュース月0円〜225億PV

日経新聞は学割プランやセット割引こそあれど、4200円のプランが基本だ。値段が高いこともあって外部の広告が少なく、不適切なものは表示されない。トップページも洗練されていて見やすい。日経会社情報など、関連サービスも「全部入り」で戦う。機能を抑える代わりに、価格が安くなるなどの低位プランは用意していない。

他紙はジリ貧

他はどうか。毎日新聞のように、初月99円でプロモーションを図るところもあれば、産経のように記事をほぼ無料化してネットニュース化するやり方もある。

読売新聞オンラインは紙の新聞を契約していないと有料記事を読むことはできない「囲い込み」の戦略をとった。朝日はプランを複数用意して戦う。最安は980円だが、1980円、3800円とプランを小分けする。

しかし、どれも結果はジリ貧となった。産経新聞はほとんどの記事を無料化した結果、収益獲得に苦戦する。産経電子版と産経ニュースの統合を名目に、旧プランから最大9割近い値上げを11月に行ったばかりだ。

読売新聞は契約のハードルの高さが課題になった。紙を読みたくないから電子版を契約したいユーザーの取り込みに失敗している。

朝日・毎日はどうか。毎日新聞は完全に空気と化した。直近で見る毎日新聞の記事はほとんどがYahoo!ニュース。資本金を10億円から1億へと減らしたこともあってか、厳しい財政状況が想像できる。

朝日は日経と似たような戦略をとっているが、プランを複雑化したことは失敗だったかもしれない。月額980円で月に約50本の記事を読むことができる。しかし、最上位プランの3800円でアップグレードされるのは、実際の紙面をスマホで読めることと記事の閲覧本数が無制限になるだけ。記事の閲覧無制限に至っては中間の1980円でも可能だ。プランの差別化を十分にできなかった。

一人あたり5.05PV、他紙引き離す

日経電子版の一人当たりPVも他紙を圧倒している。月間PV(閲覧回数)と月間UU(訪問者数)で分析する「一人あたりPV」を調べると、日経電子版が5PVを超えるのに対して、他社はほとんどが3PV台にとどまる。産経新聞に至っては2.73で最低だった。その社のコンテンツを読むためにアクセスするユーザーが突出して高い。

日本では「ビジネスマンなら日経は必ず読む」空気が自然と定着し、気づけば文化となっていた。それが日経自身のブランド力を高めた。その文化がいまだに根強いのではないか。「真面目」な印象を持たれることで、ネットでも意識の高いユーザーを獲得できた。

価格設定が高いことも要因の一つとなる。あえて高くすることで、「高いから読む」心理をついた。価格が高い分「全部入り」のためコンテンツが飽和していることも、圧倒的なPVを演出する。

また無料記事の比率が高いメディアほど、一人あたりPVが低い傾向にあった。Googleからの検索流入を留めることができる一方で、利益は得にくい。広告の量が自然と増えていき、ネットメディアと広告が遜色ない量になってしまったマスメディアも少なくない。

ブランド力×中立

歴史的に「中立」を保つ姿勢が電子版のポテンシャルを増幅させた。誰もがなんとなく信頼する日経と、中立を貫く姿勢は相性が抜群だった。マスメディアが二極化する中で、多くのサラリーマンが読んでいることに対する配慮で始まった「中立」は、日経にとって欠かせないものとなった。産経のように保守的な新聞もあれば、リベラル的な立ち位置を取る朝日もいる。しかし、一日数百本の記事を配信する中で、政治関連の記事はそこまで多くない。

「朝日だから無理」のようなアレルギー反応を持たれない、ある意味で狡猾な立ち回りだが、これが日経電子版が成功した大きなファクターになったことは間違い無いだろう。

ネットメインの考え方

日経は2015年、電子版での生き残りをかけ、英フィナンシャルタイムズの買収を行った。世界的に有力な新聞社を買収して、インターネットで生き残る計画を練った。FTは日本の新聞社ほど紙の発行部数が多くない。その一方でネットにはめっぽう強かった。日経の潤沢な資金力・取材力と、FTが持つインターネット戦略の経験値を組み合わせた。

この買収が奏功してか、日経電子版は急激な成長を遂げた。「イブニングスクープ」では、帰宅時間帯に合わせて話題性の強い記事を配信し読者数を伸ばした。去年から始まったNIKKEI Primeでは、紙では伝えきれない情報をネットでのみ配信した。

調査報道ではデジタルの優位性を活かし、グラフィックを多用した。ビジュアルデータや動くグラフなど、ネットだからこそできるコンテンツに力を注いだ。

「紙優先」のしがらみから抜け出す、「ネットメイン」の考え方に移すことで、柔軟に選択肢を取れるようになった。

他紙、遠いネットメイン

他紙にはまだ紙優先の文化が根強い。朝日新聞は改革を進めると豪語するが、その勢いは弱いと言わざるを得ない。産経新聞は電子版(紙面配信)と産経ニュースの二つを用意したことで導線がわかりづらくなった。産経電子版の紙面で配信される内容と産経ニュースでは内容が大きく異なり、より保守色が濃くなっていると感じる。

各紙創業当時から続く「紙へのこだわり」。まずはそれを捨てるところから始めなければならない。

まだ壁越え至らぬ

順調に数を伸ばす日経でさえ、厳しい状況にさらされていることに変わりはない。電子版が数を伸ばす一方で、紙の発行部数は減少を続け、それを埋めることはできていないからだ。ユーザー数も頭打ちの兆しが見える。周辺サービスで収益を拡大できるかが最大の焦点になる。

紙の発行部数は足元で全盛期の半分に落ち込む。このまま行けば事業縮小は必至だ。近年は減少のスピードも加速しており、新聞離れの懸念は深まる。壁はまだまだ超えられぬほどに高い。

日経の電子版契約数は、国内2位の朝日新聞やNewsPicksを大きく引き離す。他方で、世界を見渡すとニューヨーク・タイムスが900万超の契約を保持して1位だ。英語圏はそもそもの母数が多く、ネットでは有利な傾向にある。
非英語メディアで見ると日経は世界1位に躍り出てるが、英語を含めると世界5位止まり。新聞社には人口云々の言い訳を振りかざすほどの猶予は残されていない。日本企業が指摘される「ガラパゴス」。それを指摘するはずの経済新聞が赤字になり、ガラパゴス化すれば嘲笑の的になることは間違いない。

英語版「Nikkei Asia」、日本の主要指数「Nikkei225」。米主要メディアのように「世界の新聞社」になるための条件は意外にも揃いつつある。これからの一層の活躍に期待したい。

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