マンガ翻訳、AIスタートアップに出版大手が7.8億円 海賊版被害防止へ 振り返りフォーマット

マンガ翻訳、AIスタートアップに出版大手が7.8億円 海賊版被害防止へ

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【東京総合 = 経済】集英社、小学館、KADOKAWAなど出版大手は26日、マンガに特化したAI翻訳技術を持つMantra(マントラ)株式会社への出資を発表した。Mantraは今回の第三者割当増資で総額約7.8億円を調達。AI技術を活用し、マンガの多言語展開を加速させる狙いだ。日本経済新聞電子版はこれに先立って25日、報じていた。

Mantraは令和2(2020)年設立の東大発ベンチャーで、マンガ翻訳に特化したAI技術の研究開発を行っている。同社の翻訳ツール「Mantra Engine」は、AIによる画像認識と機械翻訳を組み合わせることで、従来の人手による翻訳と比べて作業時間を半分以下に短縮できるという。

今回の資金調達には、集英社、小学館、KADOKAWA、スクウェア・エニックス・ホールディングスのほか、MPower Partners Fund、鉄緑会創業者の浜垣剛氏らが参加。Mantraは調達資金を活用し、翻訳精度の向上や対応言語の拡大、さらには小説やゲームなど他コンテンツへの技術応用を目指す。

出資者からは期待の声が上がっている。集英社の細野修平少年ジャンプ+編集長は「マンガのこれからの10年は国際化・多言語化がメインテーマとなる」と述べ、Mantraの技術の重要性を強調。小学館のユニバーサルメディア事業局プロデューサー和田裕樹氏は「今後の出版社にとって最も重要になるのがグローバル展開です」と語り、Mantraとの協業に期待を寄せた。

KADOKAWAの橋場一郎執行役CDOは「まだ提供されていない新しいサービスも含めて、今後日本の出版界がマンガのグローバル展開をする上で非常に有効なソリューションの提供ができるようになると信じています」とコメント。2028年3月期までに海外売上高700億円を目指す同社の中期経営計画の一環としても位置付けている。

スクウェア・エニックス・ホールディングスのグループ投資・事業開発室長植原英明氏は「Mantra社の技術やサービスがエンターテインメントコンテンツの言語の壁をなくすことによって、日本のコンテンツの海外展開はさらに促進されると思います」と期待を示した。

出版各社は、海外での日本マンガの人気高まりを背景に、AI翻訳技術を活用した世界同時配信の拡大を狙う。集英社はすでに「ONE PIECE」「SPY×FAMILY」のベトナム語訳にMantraの技術を採用。小学館も独自にカスタマイズした翻訳AIを用いて、2024年度中に世界同時配信のプラットフォーム構築を目指している。

KADOKAWAは「日本の作家・クリエイターが生み出した作品を世界中に届けるため、Mantra社への出資を通してマンガAI翻訳のテクノロジーを活用する」とコメント。令和10(2028)年3月期までに海外売上高700億円を目指す同社の中期経営計画の一環としても位置付けている。

一方で、AI翻訳の急速な普及に対しては懸念の声も上がっている。日本翻訳者協会は「AIによる翻訳は作品のニュアンスや文化的背景、登場人物の特徴を十分に反映できる品質に達していない」との見解を示している。

政府は令和15(2033)年までにコンテンツ産業の輸出額を20兆円に増やす目標を掲げており、マンガのAI翻訳はその実現に向けた重要な技術として注目されている。海賊版対策としての効果も期待される中、翻訳の質と速度のバランスをいかに取るかが今後の課題となりそうだ。

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