NTTとSBIが資本提携へ 通信と金融を融合、公的資金返済に
【東京本局 = 東証】(プライム、コード9432など、13時30分)NTTとSBIホールディングス(HD、プライム、コード8473)は29日、資本提携を結ぶことで合意した。NTTがSBIHDの第三者割当増資を引き受ける。NTTの出資比率は8.1%、規模は1108億円を計画する。三井住友に次ぐ大株主に躍り出る。SBIHDは増資によって得た資金を傘下銀の公的資金返済の原資に充てる。競合のソフトバンク、KDDI、楽天と比べて金融領域を持っていないNTTの焦りが滲む。

NTTドコモは傘下にマネックス証を抱える。マネックスG(プライム、コード8698)が過半数の株式を握るマネックス証の中間持ち株会社ドコモマネックスHDに49%出資している。取締役の人数などから会社法の規定で24年からNTTドコモの連結子会社となっている。
SBIHDも傘下にネット証券最大手のSBI証を抱えている。証券を主軸とする企業としては、純利益ベースで野村HD(プライム、コード8604)に次ぐ2位の規模を誇る。前日時点の時価総額は1.2兆円。報道を受けてSBIHDの株価は一段高となり、前日比406円(9.8%)高い4508円まで上昇する場面があった。
SBIHDは足元でメディア事業を担う新会社の設立やIP(知的財産)関連に投資する1000億円規模のファンド立ち上げを計画している。NTTとの提携を新分野への進出の足がかりとし、事業の多角化を狙う。
あわせて、NTTの完全子会社であるNTTドコモが住信SBIネ(スタンダード、コード7163)に対して1株4900円で株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。買付株数は4767万株。TOBを通じてSBIHDが34.2%所有する同社の全株式を買い取る。28日の終値に49%のプレミアム(上乗せ幅)を付与する。TOBに必要な資金は最低でも4200億円前後となる。
TOBが成立すれば住信SBIネは上場廃止となる見通し。同じく34.2%を持つ創業組の三井住友信託はTOBに応募せず、成立後にNTTドコモと議決権ベースで50対50の折半投資による2社経営を模索する。NTTは獲得競争が激化する金融分野で、証券事業の強化と銀行の獲得の両輪で攻める。
住信SBIネは、07年に前進の住友信託銀行(現・三井住友信託)とSBIHDの共同出資で設立されたインターネット専業銀行だ。預金残高は9.8兆円を超え、ネット銀行として楽天銀(プライム、コード5838)に次いで国内最大級の規模を誇る。住宅ローンや外貨預金などで競争力を持ち、口座開設数は800万に上る。NTTドコモにとっては、本格的な銀行業務への参入となり、決済から預金、融資まで一貫した金融サービスの提供が可能となる。
通信各社にとって銀行は顧客の囲い込みの要となる。菅政権で推し進められた通信料金の値下げを受けて収益源の多様化に迫られた。他社は外部企業を取り込んで独自のポイント経済圏を構築している。
ソフトバンク(プライム、コード9434)は今月、三井住友と提携した。三井住友が展開する金融アプリ「Olive」とSBのグループ会社「PayPay」が連携し、PayPayの残高を使ってOliveのカードで決済ができるようになる。PayPayは主力のバーコード決済のほかに、証券や銀行業、クレカ事業も抱える。
KDDI(プライム、コード9433)は傘下に「auじぶん銀」を抱え、三菱UFJ(プライム、コード8306)と提携して「三菱UFJeスマート証(旧auカブコム証)」を展開している。
楽天(プライム、コード4755)はネット銀としては最大手の「楽天銀」とネット証業界2位の「楽天証」をグループに持つ。発行枚数が3000万枚を超える「楽天カード」も高い知名度を誇る。
NTTドコモは過去の不祥事もあって金融事業には後ろ向きとされてきた。24年6月に前田義晃氏が社長に就いてようやく重い腰を上げた。足元ではクレカ事業の刷新も進めている。住信SBIネの買収に関しては24年9月、東洋経済が報じていたが今年始め破談していた。日本経済新聞電子版によると、ここ数週間で再度場を設けてスピード合意にこぎ着けたという。