チケットぴあ、今期は大幅増益か コロナショック抜け再成長へ

namiten

【東京本局 = 東証】(プライム、コード4337、連結)

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累損一掃と復配

チケット販売のぴあが、コロナ禍からの力強い回復を見せている。25年3月期の連結純利益は前期比42%増の15億円となり、利益剰余金も8億7400万円のマイナスまで縮小した。26年3月期には5期ぶりの復配を見込んでおり、再成長に向けた地盤は整いつつある。

同社は1972年の創業以来、日本のイベント産業の発展とともに歩んできた。情報誌「ぴあ」から始まり、現在ではチケット販売を主軸としている。年間8,500万枚のチケットを売り捌く国内最大手で、年間取扱高は2700億円程度とされる。

イベント需要が大きく落ち込んだコロナ禍では一時、売上高が673億円から258億円へと6割以上減少し、66億円の巨額赤字を計上するなど存亡の危機に直面した。だが財務基盤の強化と事業構造改革により、足元では見事な復活を遂げつつある。

市場環境の追い風と構造変化

ぴあ総研の調査によれば、23年の国内ライブ・エンタテインメント市場規模は6,857億円と過去最高を更新し、コロナ前の19年(6,295億円)を8.9%上回った。24年は7000億円の大台に乗せた公算が大きい。特筆すべきは、公演回数が依然として7割程度の回復にとどまる中で、チケット単価の上昇により市場規模が拡大している点である。この「量から質への転換」は、同社のビジネスモデルにとって極めて有利な環境変化といえる。

市場の成長ドライバーとして、大規模会場の増加、K-POPをはじめとする海外アーティストの来日公演の活発化、アニメ・声優関連イベントの拡大などが挙げられる。同社が20年に開業した「ぴあアリーナMM」は、音響に特化した1万人規模の専用アリーナとして高い評価を得ている。

収益構造

25年3月期の連結決算は、売上高が前期比14%増の453億円と順調に拡大したが、より注目すべきは収益性の劇的な改善である。営業利益率は5.8%と過去最高水準に達し、4年前の営業赤字からは驚異的な回復を示している。

23年10月に実施した料金改定の効果が出ている。利用料の改定は17年ぶりであり、システム運用費やセキュリティ対応コストの増大に対応した。

新規事業の収益化も順調に進展している。特に注目するのが「ホスピタリティ事業」。VIP向けの高付加価値チケット販売が黒字化を達成した。ラグビー日本代表戦でのピッチサイドでの練習見学や、バレエ公演での出演者との交流など、単なる観戦・鑑賞を超えた体験価値を提供することで、高単価での販売を実現している。

また26年には八重洲 新劇場・カンファレンスホールの運営を始める。劇場800席+カンファレンスホールの構造で、収益貢献が期待される。

会員特典が充実している「ぴあカード」事業も拡大が見込まれる。現在の会員数は35万人であるが、中長期的には50万人程度まで会員数が増えると予想する。

特需

25年は、大阪・関西万博(4〜10月)と東京世界陸上(9月)の2つの大型イベントが控えている。万博については同社がチケット業務を全面受託しているほか、世界陸上も70万枚のチケット販売を手掛け、手数料収入の増加が期待される。

ただこうした特殊要因を除いても、強い成長トレンドと優位性を維持している点はさらに評価したい。チケット登録会員数は2,200万人に達し、全国38,000カ所の発券ネットワーク、250社へのソリューション提供など最大手としての地位は盤石だ。

株主還元

利益剰余金の推移を見ると、コロナ前のピーク(19年3月期:44億円)から一転、21年3月期には△39億円まで悪化したが、その後3期連続で改善し、25年3月期には△8億7400万円まで回復した。26年3月期の当サイト予想が達成されれば、累積損失は一掃され、5期ぶりの復配が実現する公算が大きい。

同社の配当政策は、総還元性向40%、配当性向30%を目標としているが、期初の配当性向は6.7%にとどまる。当サイトのEPS予想をベースにした配当性向は6.1%と、目標を大きく下回っている。

このことから累損一掃後は段階的な配当性向の引き上げが予想され、中期的には30%程度への上昇が期待できる。

投資判断

5月23日終値の2827円は、26年3月期の会社予想EPS150円に対してPER18.8倍の水準にある。過去10年のレンジの最低であり、エンタテインメント関連銘柄が25〜32倍付近で取引されていることを踏まえれば割安感は強い。

業績回復による再評価やROE24.9%という高い資本効率、プラットフォーマーとしての安定性などを考慮すれば、当サイトは23〜25倍が妥当と判断した。これは前期までの極端な高PER(45倍)への回帰を期待するものではなく、成熟化する市場環境と安定的な収益基盤を反映した現実的な水準である。

当サイトの業績予想では、26年3月期の売上高490億円(会社予想470億円)、営業利益38億円(同34億円)、純利益25億円(同23億円)と、会社予想を上回る可能性が高いと分析する。この場合のEPS163円に対してPER24倍を適用すれば、目標株価は3,900円となり、現在の株価から38%の上昇余地が存在する。

リスクと注目点

リスクとしては、景気後退によるエンタテインメント支出の減少、大型イベント後の反動減、システム投資負担の増大などが挙げられる。また、公演回数の回復が7割にとどまっている現状では、供給制約が依然継続していると見られ、中長期的な課題として認識する必要がある。

今後の注目点は、万博・世界陸上のチケット販売動向、新規事業の収益貢献度の拡大などがある。特に「デジタルメディア・データマーケティング事業」は、2,200万人の会員データを活用した新たな収益源として期待が大きい。

レーティング

ぴあは、コロナ禍の危機を乗り越え、より強靭な収益体質を獲得しつつある。エンタテインメント市場の構造変化を追い風に、量から質への転換を果たし、収益性の高いビジネスモデルへの進化を遂げている。累損一掃と復配実現が視野に入る中、現在の株価水準は中長期的な投資機会を提供していると判断する。目標株価を3,900円とし、目先3ヶ月の投資判断は「買い」とする。

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