ぴあ、当サイトは最上位判断据え置き 目標株価引き上げ
【東京本局 = 東証】(プライム、コード4337、連結)
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累損一掃
チケット販売のぴあはコロナ禍の累損の一掃が完了し、今期中間から利益拡大フェーズに入ると当サイトは見ている。25年3月期の連結純利益は前期比42%増の15億円となり、利益剰余金も8億円のマイナスまで縮小した。25年4〜6月期には累損を一掃し、同6億円のプラスに転換した。今期には5期ぶりの復配を見込んでおり、再成長に向けた地盤は整いつつある。
同社は1972年創業。情報誌「ぴあ」を始め、現在ではチケット販売を主軸としている。年間8500万枚のチケットを売り捌く国内最大手で、年間取扱高は2700億円程度。
イベント需要が大きく落ち込んだコロナ禍では一時、売上高が673億円から258億円へと6割以上減少し、66億円の巨額の最終赤字を計上するなど存亡の危機に直面した。だが財務基盤の強化と事業構造改革に加え、収入源の多角化などを進めており、同社の企業価値は今後膨らむと当サイトは考えている。
市場環境の追い風と構造変化
ぴあ総研の調査によれば、23年の国内ライブ・エンタテインメント市場規模は6857億円と過去最高を更新し、コロナ前の19年(6295億円)を8.9%上回った。24年は前年比12%増の7605億円だった。23年時点で公演回数がコロナ前と比較して7割程度の回復にとどまる中で、チケット単価の上昇により市場規模が拡大している。25年は6%増の8100億円になる見通しだが、万博や世界陸上といった大型イベントもあり、同社の取扱高は堅調な伸びになると当サイトは考えている。
市場の成長ドライバーとして、大規模会場の増加、K-POPをはじめとする海外アーティストの来日公演の活発化、アニメ・声優関連イベントの拡大などが挙げられる。また同社が20年に開業した「ぴあアリーナMM」は、音響に特化した1万人規模の専用アリーナとして高い評価を得ている。コロナ禍での開業で当初は償却が重荷になっていたが、直近は利益回収フェーズに入っている。
収益構造
25年4〜6月期の連結決算は、売上高が前期比33%増の136億円と順調に拡大し、営業利益は3.5倍の23億円だった。前期から継続して利益率は改善傾向にあることが確認できる。進捗率は1Q時点で7割と上方修正の余地が大きいと当サイトは考えている。
23年10月に実施した料金改定の効果が出ている。利用料の改定は17年ぶりであり、システム運用費やセキュリティ対応コストの増大に対応した。
万博も期待が高まる。チケット販売は閉会まで予約が埋まっているとの情報があるほか、未使用チケットの返金は行わない。1Q以上に7〜9月期のチケット販売が好調だったようで、滑り込みによる利益拡大が大いに期待できる。
26年には八重洲 新劇場・カンファレンスホールの運営を始める。劇場800席+カンファレンスホールの構造で、収益貢献が期待される。
会員特典が充実している「ぴあカード」事業も拡大が見込まれる。現在の会員数は35万人であるが、中長期的には50万人程度まで会員数が増やせると当サイトは予想する。
特需
25年は、大阪・関西万博(4〜10月)と東京世界陸上(9月)の2つの大型イベントでチケット販売を担った。万博については同社がチケット業務を全面受託しているほか、世界陸上も70万枚のチケット販売を手掛け、手数料収入の増加が期待される。
ただこうした特殊要因を除いても、強い成長トレンドと優位性を維持している点はさらに評価したい。チケット登録会員数は2200万人に達し、全国38000カ所の発券ネットワーク、250社へのソリューション提供など最大手としての地位は盤石だ。
株主還元
利益剰余金の推移を見ると、コロナ前のピーク(19年3月期:44億円)から一転、21年3月期には△39億円まで悪化したが、その後3期連続で改善し、25年3月期には△8億7400万円まで回復した。26年3月期の当サイト予想が達成されれば、累積損失は一掃され、5期ぶりの復配が実現する公算が大きい。
同社の配当政策は、総還元性向40%、配当性向30%を目標としているが、期初の配当性向は6.7%にとどまる。累損8億円を除いた剰余金ベースでは10.7%となり、なお低い水準にあると言える。さらに当サイトのEPS予想をベースにした配当性向は4.5%と、目標を大きく下回る。
このことから累損一掃後は段階的な配当性向の引き上げが予想され、中期的には30%程度への上昇が期待できる。当サイトとしては、今期の一株あたり配当金は配当性向10%の20〜25円程度が適切である考えている。なお配当性向30%を当サイト予想に適用した場合、一株あたり配当金は65〜70円程度となる。この場合の年間配当利回りは1.9%となり、おおむね市場平均と同水準に持っていくことができるみている。
投資判断
5月23日終値の2827円は、今期の会社予想EPS150円に対してPER18.8倍の水準にある。過去10年のレンジの最低であり、エンタテインメント関連銘柄が25〜32倍付近で取引されていることを踏まえれば割安感は強い。
ただし、株主資本の拡大が見込まれる中でROEは今後低下傾向になると当サイトは考えているほか、足元の株価は一定程度の上方修正を織り込んでいるとの前提のもと、予想PERは前回予想から4ポイント引き下げ、20倍が妥当と判断した。前期までの極端なPER(45倍)への回帰を期待するものではなく、成熟化する市場環境と安定的な収益基盤を反映した現実的な水準である。
当サイトの業績予想は1Qの販売高が当サイト予想を大きく上回ったことを受け、上方修正する。26年3月期の売上高500億円(前回予想490億円)、営業利益50億円(同38億円)、純利益35億円(同25億円)と、会社予想を上回る可能性が高いと見ている。
| 業績予想履歴 | ||||
| 売上高 | 営業益 | 純利益 | EPS | |
| 実績 | 453 | 26 | 15 | 104 |
| (うち中間) | 211 | 12 | 6 | 42 |
| (うち下期) | 241 | 14 | 9 | 61 |
| 会社5月 | 470◆ | 34◆ | 23◆ | 150◆ |
| 予想5月 | 490◆ | 38◆ | 25◆ | 163◆ |
| 1Q実績 | 136 | 23 | 15 | 102 |
| 会社8月 | 470→ | 34→ | 23→ | 150→ |
| 東洋経済 | 490↑ | 42↑ | 29↑ | 185↑ |
| (うち中間) | 250↑ | 30↑ | 19↑ | 121↑ |
| 予想9月 | 500↑ | 50↑ | 35↑ | 228↑ |
| (うち中間) | 280◆ | 35◆ | 25◆ | 163◆ |
| (うち下期) | 220◆ | 15◆ | 10◆ | 65◆ |
この場合のEPS228円に対してPER20倍を適用すれば、目標株価は4500円となる。現在の株価から28%の上昇余地が存在する。もっとも前回予想時点の上昇余地38%からは縮小しているほか、3700円前後で上値抵抗が予測されることから会社から上方修正のガイダンスが公表されるまでは概ねこの水準で推移すると考えられる。
なお、4〜9月期の中間決算については、売上高280億円、営業利益35億円、純利益は25億円前後になると考えている。
レーティング
累損一掃と復配実現が確実視される中、現在の株価水準は整合的な水準に達しておらず、中長期的に豊富な投資機会にあると当サイトは考えている。よって、目標株価を前回5月予想から600円引き上げ4500円とし、足元を15%以上上回っていることから目先3ヶ月の投資判断は3段階で最上位の「買い」を継続する。
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