アニメ市場、円安効果と音楽市場に注目 最新統計30日発表

namiten

【東京本局 = エンターテインメント】日本動画協会は東京国際映画祭(TIFF)と併催されるTIFFCOMで2024年のアニメ市場規模を公表すると発表した。2024年は主要通貨に対してドル高が継続し、前年比で8%弱の円安になった。円安は海外市場のヘッドラインを押し上げる方向で作用する。海外市場がドル建てで2年連続拡大できたかが焦点だ。

 TIFFCOM(10月29ー31日)は毎年TIFFと併催されるビジネス向けのイベントで、今年は東京産業貿易センター(東京・浜松町)で開催される。30日の午後4時からアニメ産業レポートの編集統括を務める長谷川氏などがセミナーに登壇し、24年のアニメ市場規模の速報値を公表する。

 前年11月に同イベントで発表された23年のアニメ市場は前年比14%増の3兆3465億円だった。うち海外市場が18%増の1兆7222億円と国内市場の伸び(10%)を大きく上回り、20年以来3年ぶりに海外のシェアが50%を上回った。ただこの間に、平均為替レートは131円から140円台に7%ほど円安が進んでいた。18%の伸びのうち4割は円安による数字のまやかしだったとも言える。

 長い目で見ると、23年の海外市場は19年比43%拡大しているが、ドル建てでは12%増だった。海外市場が前年比で7%減少した22年も、円建てでは1割強拡大した。コロナ禍での巣ごもり需要の反動から娯楽産業全体が厳しい年となった。ただこの期間にロシア・ウクライナ戦争に伴う物価高が目立ち始めた。加えてコロナ禍の逆回転で各国が金融政策を転換する中で日銀はマイナス金利を据え置いた。外為相場は110円前後から130円台まで急落した。

 24年の平均為替レートは当サイト試算で151円前後だったようだ。前年比で7%台後半の円安となり、23年と同程度の押し上げ効果を維持する。海外市場の盛り上がりが継続し、国内市場と合わせた合計が前年と同等の伸びを維持できれば、市場規模は3兆8000億円超となる可能性もある。

 上場企業の動向を点検すると、東映アニメーション(4816)は海外での版権売上が25年3月期(前期)に前の期比39%伸びた。海外向けの映像販売は同15%伸びた。

 東宝(9602)によると、TOHO animation事業の売上高は25年2月期(前期)に同19%伸び554億円だった。そのうち海外は同12%伸び177億円だった。

 ソニーグループ(6758)によると、国内最大のアニメ関連会社アニプレックスの25年3月期(前期)の売上(国内・海外の合算)は同4%弱の減収となり、1458億円だったようだ。最終損益は212億円の黒字だった。

 IGポート(3791)によると、25年5月期(前期)の売上高は同24%増の145億円だった。そのうち版権事業の売上高は同31%増の39億円、映像制作業は同17%増の73億円だったようだ。商品事業では8億円の売り上げを計上した。連結子会社Production I.G.の売上高は5割増の70億円、WITスタジオの売上高は前年並みの44億円だった。

 独立系スタジオのMAPPAによると、同社の前年度売上高は前の期比並みだった。

 独立系スタジオのサンライズ(バンナムフィルムワークス)によると、同社の前年度売上高は2割増の455億円だった。

 独立系スタジオのぴえろによると、同社の前年度売上高は14%増の126億円だった。

 独立系スタジオのトムス、ユーフォーテーブルや動画工房、シャフトの売上高は現時点でわかっていない。

 国内市場について、当サイトの試算では、円盤市場が6%ほど拡大した。イベント市場もチケット代が伸び好調だったようだ。映画は映画市場全体が縮小した中でもアニメは堅調だったもよう。キャラクター市場は前年比3%ほど拡大し1.6兆円強だったみたいで、アニメ商品も底堅く推移したと考えられる。

 個別では音楽市場に注目だ。統計上、アニメ音楽市場では主題歌であってもJ-POPを売上計上できておらず、大半のアーティストの楽曲が含まれていない。アニメ音楽に分類される楽曲が年々減少する中で、ヘッドライン上では小さく見えがちだった。しかし、前年のレポートではこの問題点に触れ、改善を匂わせた。ORICONによると、国内の音楽売上は前年比1%増の6000億円ほどだったが、計上する楽曲数が増加すれば統計上では市場の急拡大が見込める。

 狭義のアニメ市場(制作スタジオ売上高)にも注目だ。人手不足に起因するコスト増の影響もあり、引き続き高成長が期待される。帝国データバンク(東京・港)によると、アニメ制作スタジオ293社の24年度の売上高は前の期比4%増の3621億円(合算)だった。そのうち、狭義のアニメ市場と近い動きをする元請・グロス請けの売上高は7%増であった。狭義のアニメ市場も25%の高成長を実現した23年度からは伸び率が縮小しそうだ。ただ足元の需給は一層引き締まっており、制作コストは膨らんでいる。帝国データバンクによると25年度は10%超伸びてスタジオ売上高は4000億円を超える見通しだ。

 先行きを展望すると25年の平均為替レートは148円台で5年ぶりの前年比円高になるようで、日米金利差が縮小していけば26年も緩やかではあろうがこの動きは継続するであろう。そうなれば当然、広がり続けていたドル建てと円建ての差は徐々に縮小していく可能性が高い。国が掲げた『33年にコンテンツ海外売上20兆円』の目標達成を見極める上でも、24年の海外市場の動向(特にドル建て)は要チェックだ。30日の発表に期待したい。

※SNSシェアの場合、必ず利用規約をご確認ください。
コンテンツの翻案、リンクを含まない引用・スクリーンショットの共有は法律・法令、当サイト利用規約で禁止されています。
サイト内PR

Google Newsでnamiten.jpをフォロー

広告
namiten.jp
namiten.jp
広報
namiten.jp広報班にお問い合せがある場合、以下の通りお願いします。

当サイト掲載情報について、法的請求がある場合…お問い合わせへ
当サイト掲載情報について、不備や依頼等がある場合…メール、Twitter DM等
広告
記事URLをコピーしました