Google、検索AIサービスの有料化検討 検索エンジン「完全無料」時代終わる
【東京総合 = テクノロジー】米Googleは、生成AIを活用した検索サービスを一部有料化する。英有力紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が現地時間3日、同社に詳しい関係者の話として報じた。
Googleは現在、「Search Generative Experience(SGE)」と呼ばれる試験機能を提供している。SGEは、ユーザーが検索した際に、検索画面の上部にAIが検索結果をもとに情報を提供してくれるサービスだ。
このAI検索機能の一部を、既存のサブスク(定額課金)サービスの上位プランに組み込むことを検討しているという。ただ、従来の無料検索サービスは継続し、広告による収益化モデルは維持する方針だ。
Google広報は3日、「グーグル全体で提供するサブスクリプションサービスの強化に向け、新たなプレミアム機能やサービスの開発を進める」と話した。一方で「広告のない検索サービスの開発は現在検討していない」と述べ、主力の広告ビジネスを軸としつつ、高度なAI機能に絞って有料化する方向で調整しているとした。
同社は、ほとんどのサービスにサブスク型プランを導入している。YouTubeをはじめ、Google Driveの容量を拡張できる「Google One」も提供している。Googleは最近、Google Oneのサービス拡張に力を入れていて、Drive関連の優遇に限らず、VPNやGoogle Meetなど独自機能も開発した。
同社はGoogle OneにAI関連サービスの組み入れも始めた。今年2月に提供が開始されているGoogle版ChatGPT「Gemini」の高性能モデルを、Google Oneの2900円プラン「AIプラン」で利用できるようにした。ここに現在試験運用中のSGEも組み込むことで、AI関連サービスの収益力強化を狙う。
Googleの持ち株会社、Alphabetは、収益のほとんどをインターネット広告や検索広告が占める。生成AI事業に力を入れる同社だが、採算があわないなどの懸念の声も強かった。ユーザーが、SGEで欲しい情報を得てしまうと、検索結果に表示された個別のページにアクセスしなくなってしまう。ほとんどのサイト・ブログはGoogleの広告配信システムを利用しているため、アクセスが減少してしまえば、広告関連の収益が圧迫される。そのため、Googleは生成AIの発表当時から検索サービスに直接組み込むことを控えてきた。
しかし、競合のMicrosoftが開発する検索サービス「Bing」が、ChatGPTにも使われている生成AIモデル「GPT-4」を導入し、ユーザーをGoogleから奪い始めた。そのためGoogleは、どのような収益モデルで提供するか検討段階だったSGEを慌てて導入したという経緯がある。今回、導入からおよそ1年が経つSGEが、無料で提供し続けると十分な採算が取れないことが判明し、有料化を検討していると見られる。
AIを活用した検索サービスを巡る競争は激化の一途をたどる。米OpenAIは対話AIの「ChatGPT」と提携した検索エンジン「Bing」の有料プラン(月額20ドル)を発表した。AI検索スタートアップの米Perplexityも月間1000万人のユーザーを獲得し注目を集めている。
生成AIの開発には、学習用の大規模データや半導体の開発、優秀な人材の確保、データセンターの運用など、膨大なコストがかかる。AmazonやMicrosoftなどに先を行かれるGoogleは、巨額の投資を進めており、AI関連サービスを「完全無料」で提供するビジネスプランは転換期を迎えつつあるようだ。
GoogleによるAI検索の有料化検討は、他社との競争力維持のために先手を打ったと見られる。無料サービスを守りつつ、AIの付加価値にも料金を設定する。ユーザーや規制当局の反感を招かない料金設定が欠かせない。