楽天モバイル、開始丸4年で700万契約 なお黒字化至らず
【東京総合 = テクノロジー】楽天モバイル開始から丸4年を迎えた8日、三木谷社長はX(旧Twitter)で、契約者数が700万人(MVNO、MNO合計)を突破したと明らかにした。12月末時点の633万人から4ヶ月で70万人積み増したことになる。契約数は足元で再加速しているものの、法人プランの開始や0円プラン廃止による解約一巡の面が大きい。
基地局整備などに伴う多額の設備投資が重荷となり、グループ全体の業績改善の足かせとなっている。金融子会社の再編で資金を確保し、早期の単体黒字化を目指すが、競争が激しい携帯市場で巻き返しを図れるかは不透明だ。
楽天は今月1日、楽天銀行や楽天証券ホールディングス(HD)、楽天カードなどの金融子会社を10月をメドに一つのグループに再編すると発表した。金融事業の連携を深め、収益力を高める狙いだ。23年12月期連結決算では金融事業が営業利益の3割以上を稼ぐ大黒柱だ。
ただ、金融子会社株式の売却などで得た資金は、多くが携帯事業への投資に充てられてきた。23年12月期までの4年間で携帯事業は計1兆4000億円超の赤字を計上。グループ全体でも5期連続の最終赤字に沈んだ。自社回線整備を急ぐなかで膨らんだ有利子負債は23年12月末で1兆6379億円と、サービス開始前の約1.7倍に達する。
足元では、「0円プラン」廃止に伴う解約が一巡したことや、法人向けサービスが伸びていることで、契約数は増加基調にある。ただ、契約数のうち法人の割合が高まるなか、1契約当たりの月間売上高を示すARPU(アルピュー)は23年10~12月期で1986円まで低下。黒字化に必要とされる2500~3000円を大きく下回っている。
契約者数700万人も、談合3社と呼ばれるNTTドコモやKDDI、ソフトバンクなど大手に比べると水準は低い。業界シェアは23年12月時点で2.6%にとどまる。
楽天の三木谷浩史会長兼社長は2月、24年内のEBITDAベース(利払い・税引き・償却前利益)での単月黒字化を目指す考えを示した。ただ、そのためには契約数を800万~1000万件まで伸ばしつつ、ARPUを大幅に引き上げる必要がある。プラチナバンドの獲得や物価上昇などをバネに、サービス拡充や割引見直しなどによる顧客の上位プランへの移行を促す方針とみられるが、値上げによる解約率上昇などのリスクもはらむ。
楽天が後発の不利を挽回し、業界で存在感を示せるかは予断を許さない。金融事業の再編は携帯の早期立て直しに向けた「賭け」の色合いが濃い。