KADOKAWAとドワンゴ、サイバー攻撃は「ランサムウェア」 完全復旧に1か月以上、補償も予定
最終更新16:05
「ニコニコ動画(Re:仮)」を公開
ニコニコ漫画アプリの機能制限付き再開
KADOKAWAのシステム復旧見込み
ニコニコ公式番組・チャンネル番組を中止
ニコニコサービスの完全復旧にかかる時間
【東京総合 = 社会】KADOKAWAとドワンゴは14日、先週8日から続くシステム障害について、外部からのランサムウェアを含む大規模なサイバー攻撃によるものだったと発表した。「ニコニコ」サービスの完全復旧には1か月以上かかる見通しで、再開できるサービスから順次再開していく方針だ。同社はプレミアム会員などへの補償も予定している。
発表によると、KADOKAWAグループ企業のデータセンターがサイバー攻撃を受け、大量の仮想マシンが暗号化されて利用不能な状態に陥った。その影響で、動画共有サイト「ニコニコ動画」や生放送プラットフォーム「ニコニコ生放送」をはじめとする「ニコニコ」のサービス全般が停止。さらに、ドワンゴの社内ネットワークにも感染が及んだため、セキュリティ確保のため歌舞伎座オフィスへの出社禁止や社内業務システムの停止といった措置も取られることになった。
攻撃は発覚後も執拗に続けられ、一旦シャットダウンしたサーバーを第三者が外部から不正に起動させて感染拡大を図るといった巧妙な手口も明らかになっている。ドワンゴは被害の拡大を防ぐため、物理的にサーバーの電源ケーブルや通信ケーブルを抜線するなど、徹底的な封じ込め策を講じたという。
現時点の調査で、ニコニコ動画のシステムと投稿された動画データ自体は被害を免れていることが判明。一方、ニコニコ生放送については、システムは無事だったものの過去の番組アーカイブ(タイムシフト)が視聴不能になる恐れがあるという。ゲームや電子書籍を提供する「ニコニコチャンネル」なども使用できない。生徒向け学習アプリ「N予備校」も機能を一部制限した状態だ。同社は情報漏洩の有無についても調査を進めているが、現時点で個人情報やクレジットカード情報の流出は確認されていないとしている。
ドワンゴは今回の事態を受け、番組の中止とサービス停止に伴う補償を行う方針を明らかにした。ニコニコのプレミアム会員やニコニコチャンネルの有料会員向けには6月と7月分の月額料金を対象とする予定。また、クリエイター奨励金の分配についても検討するという。具体的な補償内容は今後詰める。
一方、ドワンゴは14日15時、アカウント登録不要で2007年当時の人気動画を中心としたラインナップが楽しめる新バージョン「ニコニコ動画(Re:仮)」の提供を開始。まずはニコニコの原点に立ち返り、コアなファンに向けた限定的なサービス再開を果たした。また、ニコニコ漫画アプリについても6月中の復旧を目指しており、各種機能を制限した形での再開を予定している。
KADOKAWAによると、同社も複数のウェブサイトでアクセス障害が発生しているという。国内の書籍の受発注システムやデジタル製造工場、物流システムが停止しており、新刊の制作や発売に遅れが出る恐れがある。オンラインでのグッズ販売も一部で受注や配送に支障をきたしている。さらに経理システムも機能停止に陥っており、取引先への支払いが滞る事態も想定される。同社は6月末までのシステム復旧を目指すとしている。
両社は外部の専門機関とも連携し原因究明を進める一方、今後のサイバー攻撃を防ぐためグループ全体でのセキュリティ強化に乗り出す。具体的には、ログ管理の徹底や、システムの監視体制の強化、定期的な脆弱性診断の実施、従業員への教育といった多角的な対策を講じていく。
夏野社長は14日に公開したビデオメッセージで、今回の大規模システム障害の原因が、ニコニコを中心としたサービスを標的としたランサムウェアを含む大規模なサイバー攻撃であったことが明らかにした。同氏によると、KADOKAWAの各種社内システムについては来週以降に段階的な復旧を図り、6月末をメドに安全なネットワーク・サーバー環境の構築と基幹システムの復旧を目指すとのこと。一方、ニコニコについては、これまでの環境下でのシステム再構築が困難なため、安全な環境を新たに用意したうえでの作業が必要になるという。そのため、正確な復旧時期は被害状況の調査次第だが、1か月以上を要する見込みで、再開できるサービスから順次再開していく方針であることが示された。
夏野社長は「ニコニコユーザーの皆さんにはご迷惑並びにご心配をおかけしていることを本当に申し訳なく思っております」と陳謝。続けて、ニコニコのサービスに関する詳細は、この後の栗田穣崇氏と鈴木圭一氏からの説明を参照するよう呼びかけた。最後に「復旧に向けて全社員が頑張って作業を進めております」と述べ、ユーザーに対して「復旧まで今しばらくお待ちください」と理解を求めるとともに、重ねて謝罪の言葉を述べて、メッセージを締めくくった。