注目銘柄:ブシロード 今期、大幅増益に(下方修正)

namiten

【東京本局 = 東証】(グロース、コード7803、連結)

株式会社ブシロード

2007年5月、木谷高明氏がトレーディングカードゲーム(トレカ、TCG)事業の展開を目指して設立。19年7月、東京証券取引所マザーズに上場。22年4月、グロース市場へ移行。資本金は57億円。

主にエンターテイメント事業(TCG、モバイルゲーム、グッズ、アニメ制作等)とスポーツ事業(プロレス興行、女子プロレス「スターダム」等)を展開。24年6月期の連結売上高は462億円(前期比5.2%)。従業員数は単体246名、連結853名。

代表作「ヴァイスシュヴァルツ」「カードファイト!! ヴァンガード」などのTCG。「バンドリ!」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」等のIPを保有。国内外に子会社17社を持ち、新日本プロレスリングの株式70%を所有。シンガポールや米国にも展開している。

内部取引含む売上構成

<エンターテインメント>85%

<スポーツ事業>14.6%

業績の概況

TCGやアニメコンテンツ事業を展開するブシロード(グロース、コード7803)が2月14日に発表した25年6月期(今期)の中間決算は、営業利益が前年同期比4.3倍の17億円だった。第1四半期の一時的な為替差損による落ち込みを第2四半期で挽回した。あわせて、今期の連結計画を上方修正し、営業利益は前期比3.4倍の30億円になりそうだと発表した。

当サイトはこれでもなお保守的な水準であると考え、3月17日に連結営業利益は40億円超まで上振れる可能性があると分析していた。

同社は今月15日、会社計画を再度上方修正し、営業利益が前期比4.7倍の41億円に上振れそうだと発表した。これは当サイトの予想とほぼ同水準であり、足元のTCG・イベント事業が会社想定を大幅に上回って推移しているようだ。

発表を受けて、当サイトは一連の予想を更新した。営業利益を幅を持たせていた40億円超から、会社予想をやや下回る前期比4.5倍の40億円へと下方修正する。依然としてコンセンサス予想(いちよし・SBI証、3月25日時点)の前期比3.7倍の33億円は大きく上回る。

予想対象外だった売上高は会社並みの54億円とする。純利益は幅があった30億円超から27億円へと下方修正する。EPSも43円以上としていた数値を39円に見直す。これに伴い目先の目標株価は850円から750円へと100円下方修正する。レーティングは同社の業績不透明性を考慮し、目先3ヶ月の格付けは「強気」を維持、見通し12ヶ月は対象外とする。

なお依然として為替の動向等に注視は必要であるが、前回予想の5倍増益が絶望的になったかと言えばそういうわけではない。今後も業績見通しは機動的に変更したいと考えている。26年6月期の予想は次回にも開示したいが、幾分同社の業績動向が不安定であり、長期の分析が難しいことはご容赦いただきたい。配当に関して言えば、現時点の会社計画を元とした当サイトの性向予想は11%前後を見込む。目標株価を元にした利回りは0.6%前後に下がることになり、当サイトとしては年6円配(前期は年4円50銭配)前後が適切だと考える。

25年6月期(今期)当サイト予想
前回予想(3月)今回予想(5月)
売上高54億円
前回予想比
営業利益40+億円40億円
前回予想比下方修正
純利益30+億円27億円
前回予想比下方修正
EPS43.5+円39.2円
目標株価850円750円
前回予想比下方修正

以下、3月17日時点で希望者向けに配信した記事をそのまま掲載する。中間決算時点の情報であることに留意。

為替差損が消し飛ばした第1四半期

ブシロードが11月に発表した24年7〜9月期の連結決算は、売上高が前年同期比5%増の122億円と増収を確保したものの、営業利益は同17%減の5億円と減益だった。最も減益幅が顕著なのは経常利益で、前年同期の7億円の黒字から一転、664万円の赤字に転落した。

為替差損の発生とスポーツ事業の落ち込みが響いた。前年同期は1億円の為替差益を計上していたが、今期は一転6億円の損失を計上した。その振れ幅は7億円にも達する。借入金の増加に伴い、金利負担も前年同期の1700万円から4300万円へと倍増したことも業績を押し下げた。

エンターテイメント事業は売上高が前年同期比8%増、営業利益が同24%増と堅調に推移したが、スポーツ事業(新日本プロレス、スターダム)の営業利益が同76%減と落ち込んだこともマイナス要因となった。

第2四半期で一気に挽回

24年10〜12月期は一転、前年同期の赤字から大幅な黒字に転換した。売上高は前年同期比27%増の134億円、営業利益は12億円の黒字(前年同期は2億円の赤字)に浮上、純利益は11億円の黒字と急回復した。特に売上高の伸び率が第1四半期の5%増から一気に27%増へと加速した点は目を見張るものがある。

同社によれば、「TCGユニットでは、新タイトル『hololive OFFICIAL CARD GAME』と『五等分の花嫁カードゲーム』がともに順調なスタートを切り、既存タイトルも安定成長を維持している」ことが貢献したようだ。

MDユニット(グッズ販売)では海外出荷が好調で、特にフィギュアブランド「PalVerse」が成長ドライバーとなった。ライブエンタメユニットでは「BanG Dream!」関連のライブイベントの動員とパッケージ販売が想定を上回った。

通期の大幅上振れ余地

これらの結果、中間期累計では売上高が前年同期比16%増の257億円、営業利益同4.2倍の17億円、純利益は同95.5倍の12億円と急成長した。

2月14日に発表した今期の会社予想は、売上高510億円(前期比10%増)、営業利益30億円(同4.4倍)、当期純利益15億円(同86%増)になる見通しだ。

しかし中間決算ですでに、純利益が通期予想の82.8%に達している。過去2年間の第3・第4四半期の業績傾向を精査すると、例年第4四半期に収益が集中する傾向が強い。今期も1月からTVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」の放送が開始されていることや、下期に大型ライブイベント開催を控えており、業績の回復はさらに速まると当サイトは予測している。

セグメント別分析:スポーツ事業の低迷と回復可能性

セグメント別では、エンターテイメント事業が売上高前年同期比20%増の229億円、セグメント利益同5.7倍の17億円と急拡大した一方、スポーツ事業は売上高同9%減の27億円、セグメント損益が7200万円の赤字(前年同期は1億3900万円の黒字)と低調だった。

スポーツ事業については「新日本プロレスリングは、ビッグマッチの間の端境期であり、観客動員数は引き続き軟調に推移した」ものの、「スターダムは、運営体制の見直しが進み、興行事業の収益性が改善している」とあり、下期での回復余地を残している。

通期着地予想:5倍増益も視野に

通期予想に対する中間期時点での進捗率は、売上高50%、営業利益57%、純利益82%となっている。前期同時期の進捗率が売上高47%、営業利益46%、純利益1%であったことを考慮すると、特に利益面で大幅な上振れ余地があることが明確である。

特に、第2四半期単独では営業利益12億円を計上しており、第1四半期の為替差損による経常減益影響(約7億円)を考慮すると、同等の業績が下期も続くと仮定すれば、通期の営業利益は40億円超、純利益は30億円超の水準に達する可能性も十分にある。これは現在の会社予想の2倍以上に相当する。

現時点の変動要因として、為替動向には注意が必要である。1円の変動による経常利益への影響は約6500万円と推計され、10円の変動では年間で約26億円の影響となる可能性がある。しかし第2四半期以降の為替状況は安定しており、第1四半期のような大きな為替差損が再び発生する可能性は低いとみられる。

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株価評価:PER水準の再評価余地あり

3月17日終値は536円となっている。現在の会社予想ベースの予想PERは24.1倍だが、上記の業績上振れシナリオを前提とすると実質的なPERは12倍程度まで低下する可能性がある。

TCG事業の成長性と収益性、アニメコンテンツからの安定収益、海外展開の加速を踏まえると、同社の持続的な成長と収益力向上を織り込んだ株価評価の余地は大きいと言える。当サイトの今後6ヶ月の目標株価はPER19倍、850円とする。コンセンサスベースEPSのPERが足元で15倍前後であることを踏まえれば、今後6ヶ月の当サイトレーティングは「強気」となる。

今後の注目点:新TCGの展開とアニメ連動イベント

今後は、25年4〜6月期に予定されている「BanG Dream! Ave Mujica」関連の大型ライブイベントやパッケージ販売の収益インパクトに注目したい。また、1月に開催された「WRESTLE KINGDOM 19 in 東京ドーム」と「WRESTLE DYNASTY」の2DAYSイベントがスポーツ事業の回復の契機になる可能性もある。

今期の業績は第2四半期以降、本格的な成長軌道に乗っており、1月13日に開催された「ブシロード新春大発表会 2025」での新TCGタイトルの詳細発表を含む今後の展開についても注視していく必要がある。

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