ネクストーン 調査開始、長期目線では絶好の買い場か
【東京本局 = 東証】(グロース、7094、連結)希望者向けに配信しているレポートの簡易版を掲載する。
企業概要
株式会社NexTone。証券コード7094、証券略称ネクストーン。2020年3月グロース上場。主たる事業は音楽著作権管理事業。民間としては唯一、競合は90%の市場シェアを持つJASRACのみ。じわりシェアを拡大。音楽コンテンツの配信等も手がける。レコチョクの投資が重荷も来期にかけて回収フェーズに突入すると見ている。
同社は2016年2月、株式会社イーライセンスと株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)の合併により誕生した。両社とも2000年の著作権管理事業法施行による市場自由化後に設立され、2003年にはイーライセンスが子会社を通じてデジタルコンテンツディストリビューション(DD)業務を開始、2012年にはキャスティング事業にも進出するなど、事業領域は著作権管理にとどまらない。2020年3月には東証マザーズ(現グロース市場)に上場し、無借金経営。財務透明性と成長資金の調達基盤を確保している。
市場環境
日本の音楽市場(音楽ソフト、カラオケ、音楽配信の合計)は、24年の推計で8412億円となり、23年から拡大した。コロナ禍で2020年に6090億円(前年比32%減)まで落ち込んだが、22年以降は3年連続で増加している。
内訳を見ると、音楽ソフト売上は微減の1677億円にとどまる一方、カラオケはコロナ禍前までは至らないものの4519億円に回復。音楽配信は毎年拡大して2216億円に達し、22年に初めて音楽ソフトを上回って以降、その差を広げている。ストリーミング音楽配信市場の年14%成長が、著作権使用料徴収額の拡大を牽引している。
日本の音楽著作権管理市場は、JASRACと同社の実質的な二社体制となっている。25年3月期の著作権使用料徴収額は、市場規模1587億円に対してJASRACが1445億円(91%)、同社が141億円(9%)のシェアを占める。01年の市場自由化後に28社が参入したものの、26社が撤退。高い参入障壁を形成している。
同社のシェアは着実に拡大しており、19年の約5%から25年には9%まで上昇。中期的には10%、長期的には50%のシェア獲得を目標に掲げる。委託契約による柔軟性、デジタルネイティブな運営、アニメ・ゲーム音楽分野での強みを武器に、年間1ポイント弱のシェア獲得を継続している。
業績予想
同社の業績は会社予想水準で着地することが多い。25年4〜9月期の連結決算も、売上高は計画通りに推移し、営業利益は計画比0.9億円の未達にとどまった。事業基盤となる管理楽曲数・取扱原盤数はともに着実な増加を示しており、ストックビジネスという事業特性上、中期業績計画の達成に向けて順調に進捗していると当サイトは考えている。
当サイトは今期の業績予想を会社予想と同水準とする。売上高230億円(前期比18%増)、営業利益18億円(同79%増)、純利益12億円(同73%増)を予想する。第2四半期までの進捗率は売上高44.6%、営業利益32.2%と、4Q偏重の傾向を踏まえれば順調な滑り出しであると当サイトは見ている。
投資判断ー成長性踏まえれば割安感強い
11月17日終値の1666円は、今期の会社予想EPS123円に対してPER13.5倍の水準にある。過去のPER推移を見ると、23年2月頃はPER70倍前後、2024年10月にPER27〜28倍で推移していたのに対し、現在のPER13.5倍は過去のレンジで最低水準にある。成長期待の下振れ等によりPERは低迷傾向にあると当サイトは考えている。
今期から配当を開始すると発表し、5月に株価は一時急騰したが(5月に2連続ストップ高)、レコチョク統合に伴う先行投資負担への懸念や、4〜9月期決算での営業利益未達(計画比△1億円)を受けて株価は大きく調整している。しかし、当サイトは4〜9月期決算を受けて25%も株価を調整するのは『異常』であり、現在の株価水準は割安感が強いと考えている。
同社の適正PERを検討する上では、以下の要素を考慮すべきである。第1に、著作権管理とDD事業を核とする安定的なストックビジネスモデルは、景気変動の影響を受けにくく、業績の予測可能性が高い。第2に、中期経営計画(28年3月期)では営業利益27億円を目指しており、営業利益の年平均成長率+39%という高成長が見込まれる。第3に、JASRAC独占市場への挑戦という構造的な成長余地が存在する。
一方、レコチョクグループの連結により先行投資負担が生じており、ビジネスサポート事業は当面赤字が継続する見込みだ。また、グロース市場銘柄として流動性に制約があり、機関投資家の参入余地は限定的である。
これらを総合的に勘案すると、当サイトは12ヶ月先PER17倍前後が妥当水準と考えている。これは過去の極端な高PER(70倍)への回帰を期待するものではなく、成長性と安定性を反映した現実的な水準である。中期経営計画の成長率を織り込めばPER40倍の試算も可能だが、レコチョク統合に伴う不確実性、プライム上場前の流動性制約を踏まえ、保守的な水準を採用する。
加えて、12ヶ月先予想PER17倍前後は同社が目指すプライム市場上場の要件とも整合的である。上場基準である「時価総額250億円以上」を達成するには、ー発行済株式総数994万を前提とすればー株価2500円強が必要となり、これは12ヶ月先EPS152円に対してPER17倍弱に相当する。つまり、PER17倍は企業価値とプライム上場要件の双方から導かれる現実的な水準であると言える。
目標株価
12ヶ月先予想EPS152円に対してPER17倍を適用すれば、目標株価は2500円となる。現在の株価1650円から51%の上昇余地が存在する。
この水準は、プライム上場に必要な時価総額250億円とほぼ一致する。流通時価総額100億円以上の基準も、流通株比率5割強を踏まえれば、同水準の株価で充足される計算だ。純資産50億円以上の基準は既にクリアしている。流通株比率は既5割強に達しており、株主構成を見渡しても追加の株式売り出しは困難であり、株価上昇以外にプライム上場基準を充足する手段は限られる。
なお、同社は今期から配当を始める。予想配当利回りは現在の株価水準で1.2%と、グロース市場の平均(0.8%)を上回っており魅力的である。目標株価2500円は、この平均値ちょうどで整合的だ。プライム上場後は配当性向の引き上げや安定配当の継続により、配当利回り2%程度への上昇も期待できると当サイトは考えている。
中期的には、28年3月期の中計目標(営業利益27億円、営業利益率9%以上)の達成確度が高まるにつれ、より高いバリュエーションが正当化されよう。仮に28年3月期の当サイト予想である純利益18億円を前提とすれば、EPSは185円となり、現在の水準でも2700円台が視野に入る。
レーティングー長期目線では絶好の買い場
プライム市場上場を来期中に控え、時価総額250億円への調整が経営陣としては絶対的に必要な局面にある。中期経営計画の達成確度の高さ、ストックビジネスモデルの安定性を勘案すれば、現在の株価水準は中長期的に豊富な投資機会にあると当サイトは考えている。
現在のPER13.5倍は過去のレンジで最低水準にあり、第2四半期決算での営業利益未達への過剰反応が株価を押し下げている。しかし、管理楽曲数75.8万曲(前年同期比+14.7万曲)、取扱原盤数159.8万原盤(同+22.0万原盤)と事業基盤は着実に拡大しており、ストックビジネスという特性上、中期的な成長トレンドは不変である。
配当利回りとしての整合性も視野に入れるべきだろう。2500円まで上昇してもグロース企業の平均と同水準でありこの点でも割高感は薄い。配当開始の発表時には2日連続のストップ高を演じた経緯があり、プライム上場を見据えた株主還元策の拡充が発表されれば株価の追加材料になり得ると想定している。5月のマド埋めが意識される1500円台に下落するならば、積極的な買いも躊ちょされるものではないと当サイトは想定している。
もっとも、プライム上場申請のタイミングまでは、グロース市場特有の流動性制約や、レコチョク統合に伴う短期的な利益圧迫が株価の重石となる可能性がある。また、2000円水準では上値抵抗が予測されることから、プライム上場申請の正式発表または来期見通しのガイダンスが公表されるまでは、緩やかな上昇トレンドにとどまると当サイトは見ている。
よって、①PER水準、②プライム上場水準、③配当利回りの水準の3点から計算した。目標株価は2500円とし、足元を51%上回っていることから、目先3ヶ月の投資判断は3段階で最上位の「買い」とする。短期的な株価変動リスクはあるものの、プライム市場への上場を見据えれば現在の水準は絶好の参入機会にあると当サイトは考えている。
お断り
■ 投資判断について 本レポートは情報提供を目的としており、特定の有価証券等の売買を推奨するものではありません。投資判断は、お客様ご自身の責任において行ってください。
■ 将来予測について 本レポートに記載された業績予想、目標株価等の将来に関する記述は、現時点で入手可能な情報に基づく当サイトの判断であり、実際の結果は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
■ 情報の正確性 本レポートの内容は信頼できると判断した情報源に基づいて作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。数値等については公開情報を基にしていますが、計算誤差が含まれる可能性があります。
■ 著作権 本レポートの著作権は当サイトに帰属します。無断での複製・転載・配信等は固くお断りいたします。
■ 免責事項 本資料はネクストーン(グロース、コード7094)の業績および、それに基づく金融指標の推移を表示する補助的な資料として作成されたもので、本資料は個人利用に留まる範囲で任意に作成したものであり、特定の銘柄の動向・方向性を予測、示唆、あるいは保証するものではありません。
「売買判断」に含まれる情報は、当サイトが投資判断の一助として表示しているものではなく、特定の銘柄へのいかなる投資行動も促しているものではありません。これらの情報には将来を予測する内容が含まれていますが、本資料上ではあくまで投資一般に関する知識向上を目的として活用したものであり、資料作成者および情報提供者が表示された将来を保証するものではありません。
本資料および関連情報は、令和7年11月17日時点の市況環境に基づいています。市況環境は刻一刻と変化しており、ここに表示する情報が最新のものであるとは限りません。なお、本資料および関連情報の活用によって生じたいかなる損害(直接的、間接的、付随的、結果的損害を含む)についても、情報提供者は一切の責任を負いません。これには、投資損失、機会損失、その他の金銭的損失も含まれます。
本事項の一部が、法律や法令により無効または執行不能と判断された場合でも、本事項の残りの規定および一部が無効または執行不能と判断された箇所を除く残りの部分は、継続して完全に効力を有するものとします。

