EUがXに課徴金科す方針固める ビッグテック規制を強化
【欧州本局 = スウェーデン】欧州連合(EU)は、マスク氏がオーナー兼CTOを務めるX(旧Twitter)に対し、有害コンテンツ対策の不備を理由に課徴金を科す方針を固めた。EUの域内市場担当委員ティエリー・ブルトン氏が夏季休暇前に正式な警告を発表する見通しだ。米経済メディアBloomberg通信が報じた。
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課徴金はXの年間売上高の最大6%に達する可能性がある。今年中の黒字化を目指すXに大きな打撃を与える可能性がある。EUは昨年12月にXの調査を開始しており、今回の措置はその調査結果に基づくものと見られる。特に、2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃後のXのコンテンツ管理方法に関して詳細な調査が行われた。
EUの規制当局は、Xが必要な改善を行わない場合、年末までに正式な決定を下す。その後、Xが規制に従わない場合、巨額の課徴金が科される可能性がある。
検討している課徴金は、EUが新たに制定したデジタルサービス法(DSA)とデジタル市場法(DMA)に基づく。この法律は、最も影響力のあるオンラインプラットフォームを対象としており、SNS、ECサイト、アプリストアに対して、誤情報や有害なコンテンツ(ヘイトスピーチ、テロリストのプロパガンダ、安全でないおもちゃの広告など)への対策を強化することを義務付けた。
規制当局は特に、若年ユーザーを不適切なコンテンツへと誘導する「ラビットホール」と呼ばれる現象にも注目した。これは、ユーザーが次々と関連コンテンツを閲覧し、結果として有害な情報に触れる可能性が高まる問題だ。
EUは、GAFAを始めとした巨大ITに対する規制を強めている。足元ではFacebookやInstagramを運営するMeta、中国発のECサイトAliExpress、TikTokを運営するByteDanceに対しても調査を進めている。また、Apple Inc.とMetaに対しては、DMAに基づく正式な警告が発せられたばかりだ。DMAに違反していた場合、最大で世界売上高の20%が課徴金の科せられる。
Xの広報担当者はEUの措置についてコメントを控えている。マスク氏は国との対立を深めていて、先日にはオーストラリアやブラジルで国と裁判を争った。同氏は以前から、Xの規制に関して「表現の自由の絶対主義者」とする姿勢を崩さない。過激なコンテンツを規制したいEUとの間で衝突が予想される。マスク氏は「プラットフォームの中立性」を主張しているが、EUはより積極的な有害コンテンツの排除を求めていると見られる。
Xが課徴金を科されれば、他のプラットフォームも同様の措置を受ける可能性が高まる。日本を含むアジア諸国でも、規制強化の動きが見られ、今後もIT各社と規制当局の軋轢は深まる。日本は今年5月、EUの取り組みを参考にしたプラットフォーム事業者に対する規制法案を可決した。