英競争・市場庁、予算ミスで職員1割リストラ 成長重視政権に揺れる当局
【欧州本局 = スウェーデン・東京本局 = 国際】英競争・市場庁(CMA)は、予算編成の誤りを理由に100人規模の人員削減を実施する方針を固めた。24日付の英Financial Times(FT)紙が報じた。同庁の職員全体の約1割に当たる。企業からの批判を受け、マーカス・ボッケリンク会長が辞任に追い込まれるなど、政権との軋轢が深まるなか、デジタル市場の規制強化に向けた体制にも影響を与える可能性がある。

FTによると、サラー・カーデルCEOは昨年12月の職員向け会合で、予算の見通しを誤ったとして早期退職制度を導入する方針を示した。CMAの職員数は約1200人で、年間予算は1億3900万ポンド(約260億円)。24日時点でのCMAの声明では「速やかかつ適切に対応する」としている。
成長重視を掲げる労働党政権との対立が深まるなかで実施される。政権は22日、企業活動への過度な規制を理由にマーカス・ボッケリンク会長の解任し、後任に元AmazonのUK事業責任者、ダグ・ガー氏が就く人事を固めた。
レイノルズ英ビジネス相は22日の声明で「規制当局には、企業の成長を後押しする判断を期待する」と述べ、CMAの姿勢転換を求めた。昨年10月にはスターマー首相も「規制当局は経済成長を最優先すべきだ」と訴えていた。CMAはこれまでMicrosoftによるActivision Blizzardの買収阻止を試みるなど、企業から「介入的すぎる」との批判を受けていた。
ボッケリンク前会長は「当局は少数の大企業による支配ではなく、消費者保護と公正な競争を重視してきた」と自らの実績を強調。「今後、異なるアプローチが取られるだろう」と述べ、政府の方針転換を暗に批判した。後任のガー新会長は、かつてAmazonのUK事業を率いた経験を持つ。法律事務所ゲラディン・パートナーズのトム・スミス氏は「政府は特にM&Aの審査について、強いメッセージを送っている」と指摘する。