カドカワはソニーGからの出資比率引き上げを受け入れるべきだ——26年3月期決算

namiten

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【東京本局 = 東証・エンターテインメント】(プライム、コード9468、23時)カドカワが14日に発表した26年3月期(前期)の連結決算は、純利益が前の期比82.7%減の12.8億円となり、事前の会社予想(49億円)を74%下回ったほか、市場予想の平均であるQUICKコンセンサス(8社)の51億円も大きく下回った。売上高は同1.8%増の2,829億円、営業利益は同51.3%減の81億円と、いずれも市場予想を下回る厳しい着地となった。

ガイダンスもネガティブ。27年3月期(今期)の売上高は前期比6%増の3003億円、営業利益は同24%増の101億円、EPSは39.46円である。いずれも市場予想を大きく下回っている。

当サイトは過去に希望者向けリポートで指摘しているとおり、コンセンサスを上回る可能性は極めて低いと考えていたが、株価は短期的に一段と調整すると思われる。

アニメ事業

業績悪化の主因は、アニメ・実写映像セグメントの赤字転落(営業損失4億円、前の期は47億円の黒字)にある。前の期にあったサイバー攻撃の影響がようやく払拭され、Webサービス事業は黒字転換を果たしたものの、「一難去ってまた一難」と評するほかない状況である。

会社の説明によれば、アニメ事業ではタイトルあたりの売上規模が想定を下回り、営業費用の上昇を吸収できなかったという。しかし、アニメ制作の需給逼迫と制作コストの大幅な上昇は、前の期にはすでに業界の共通認識となっていたはずである。リスクの顕在化は十分に予見できたものであり、コスト増の織り込みを怠ったとの誹りは免れない。

アニメ・実写映像の今期計画は、売上高586億円(前期比21.4%増)、営業利益5億円(前期は4億円の赤字)。トップラインの成長に対して営業損益は小幅な改善にとどまり、表面的には保守的な見通しに映る。

一方で、中期経営計画では32年3月期に連結営業利益380億円を掲げ、アニメ事業を最大の成長ドライバーに据える野心的なシナリオを描いている。足元のコスト上昇圧力の根深さを会社自身が認めていることの裏返しとも読めるが、同時に中期計画の蓋然性を著しく低下させる要因でもある。短期で慎重に置きつつ、中期では強気を維持するという描き方は、ストーリーとしては成立しても、投資家の納得を得られるものではなかろう。

同社アニメ事業に対する評価

老舗スタジオの動画工房を買収して1年と待たずに29億円もの特別損失(のれん償却)を計上したことには、驚きを禁じ得ず、目も当てられない。

これはIGポート(3791)にも繰り返し指摘してきたところだが、もはやアニメスタジオはそれ単体の価値がマイナス(ディスカウント要因)に働いていると当サイトは見ている。制作費の伸びを受注の段階で織り込めず、結果として引当金や減損を計上する流れが常態化しており、動画工房もその例外ではなかったと推察される。

足元はアニメーターの需給が逼迫し、制作能力の奪い合いの様相を呈している。この環境下でスタジオ買収という戦略の方向性そのものを真っ向から否定する意図はなく、当サイトも理解できる。しかし、そのスピードが身の丈に合っていない。

したがって現状の経営方針のまま走ることは現実的ではなく、32年3月期に内製率50%(前期実績16.2%)に引き上げるとする中期計画の目標は、いったん取り下げざるを得ないだろう。

クリエイターの定着も困難を極めよう。足元はスタジオの統合期のまっただ中であるが、いつ独立期に転じるか分からない。日本アニメはクリエイターの独立を繰り返して築かれてきた。仮にスタジオの分裂が相次げば、これまでの巨額の投資が水泡に帰す可能性も否定できない。

生成AIの急速な発達もアニメ制作のコスト構造と参入障壁を大きく塗り替える可能性がある。短期的にはコスト削減の追い風となり得る一方、中長期的にはコンテンツのコモディティ化を通じてIPの希少価値そのものを毀損するシナリオも考えなければならない。アニメ事業の見通しは、今後数年で従来以上に振れ幅が大きくなる公算が大きく、現時点で中期計画の達成確度を高く見積もることは難しい。

昨年はアニメやゲームといったIP系銘柄が脚光を浴び、マルチプルが大きく拡大した。しかし、その後は各社のガイダンスにおいて弱気な見通しが相次ぎ、株価のリレーティングが進行しているのは周知の通りである。カドカワは比較的事業ポートフォリオが広く、東映アニメやIGポートと比べれば業績の安定性は堅牢であるはずだが、それでこの体たらくである。アニメ制作業の波の激しさを改めて示したと言えよう。

当サイトは、アニメ事業を収益源として育てられる企業として、不動産収益を背景としたキャッシュフロー基盤を持つ東宝と、周辺事業が豊富で財務基盤も厚いソニーグループの2社に限られるとみている。

株価の推移を見ると、日経平均株価が24年末比で57%上昇するなか、同社株は6%の上昇にとどまっており、決算後のPTS(私設取引システム)では終値比10%安となり、明日には下落に転換していると捉えるべき水準である。

市場がアニメ事業の現状と将来像に深い不安を抱いていることは明らかであり、カドカワが単独で乗り越えることは現実的ではなかろう。当サイトは、カドカワがソニーGから受け入れている10%の出資比率を、少なくとも20%まで引き上げるよう要請するべきだと考えている。ソニーG傘下のアニメ配給会社アニプレックスは、売上高こそ横ばいながら最終損益では200億円規模の黒字を確保しており、収益性の安定したオペレーションの好例である。

ソニーGの収益力と信用、グローバルな配信・販売チャネルを盾に、アニメ事業の再成長を図る道筋を整えるべきだ。カドカワが選ぶべき道は、おのずと明らかであろう。

なお、アクティビストの香港オアシスが夏野剛CEOの解任を求める株主提案を提出したことが今日までに伝わっているが、ここまでの株主リターンと業績の推移を踏まえれば、これを一様に非難することはできない。むしろ、相当数の株主の理解を得られよう。当然の提案とすら言える。

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